小林耳鼻咽喉科内科クリニック     TEL:03-3712-4970
耳鳴りの新しい理論

 

 

 

患者さんの診察から得られる3つの事実から新しい耳鳴り理論が考えられています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事実1 他の事に集中していると耳鳴りが気にならない
他の事に集中していると耳鳴りが気にならないのは
脳が意識下で音の選択を行っているからです。

私たちの周りは音で満たされています。耳は働き者でそれらの音をすべて電気信号に変え
脳に伝えます。しかし私たちは伝わってきたすべての音の電気信号を知覚するわけではあ
りません。脳は意識下で音を選択し必要な音だけを知覚認識しています。この仕組みは音
の判断機構と呼ばれています。脳が同時に処理できる情報量には限界があり、脳は優先順
位の高いものを処理し、不必要なことは意識下で自動的に処理する特性があります。なにか
に集中すると脳はそのことを処理することを優先させ、耳鳴りは音の判断機構で自動的に処
理され耳鳴りが知覚されなくなるのです。この仕組みをうまく利用すると耳鳴りを知覚しない
ことが可能になります。ここに耳鳴りの治療のひとつめの鍵がありそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事実2 イライラ・不安・ストレスが耳鳴りを大きくする。
イライラすると耳鳴りが大きく感じるようになるのは大脳辺縁系の働きによるものです。
音の判断機構は大脳辺縁系の海馬と呼ばれる部位にあると考えられています。海馬は記憶の
中枢で、私たちは過去の記憶をもとに音の判断をしています。大脳辺縁系は同時に感情の中枢
でもあります。耳鳴りに対する音の判断が大脳辺縁系を介してイライラや不安などの感情を生み
出します。逆にイライラ・ストレスは大脳辺縁系を介して音の判断機構に影響を与え耳鳴りを大き
く感じさせるようになります。耳鳴りが不快なものに感じるのは大脳辺縁系の働きと深く関係して
います。大脳辺縁系の働きをコントロールすることが耳鳴りの治療のふたつめの鍵です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事実3 人によって耳鳴りの気になり方に差がある。
耳鳴りの気になり方に個人差があるのは大脳辺縁系が心身の相関に深くかかわっているからです
記憶と感情の中枢である大脳辺縁系は自律神経系の中枢と深く関係しています。このため私
たちは過去の出来事を思い出し(記憶)、腹を立て(感情)、心臓がどきどきする(自律神経症状)の
です。大脳辺縁系は心(記憶・感情)と体(自律神経系)の相関に深くかかわっています。記憶や
感情に個人差があるのは当然のことです。また自律神経系の働きにも個人差があることも知ら
れています。気質・体質・性格の違いということもできます。このため大脳辺縁系が重要な役割を
果たす耳鳴りの症状発現が患者さん一人一人で異なってくるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新しい耳鳴り理論①

 

内耳は音を電気信号に変換し大脳皮質へ伝えます(図の)。しかし、すべての音を知覚認識するわけではあ
りません(図の)。この現象には音の判断機構が深く関係しています。音の判断機構が必要でない音(Neutral)と
判断すると意識下で音が処理され、音は大脳皮質に到達しません。音の判断機構は記憶の中枢である大脳辺縁
系と連携し(図の)、過去の記憶をもとに伝わってきた音を処理します。必要な音(Positive)と判断すると音は
大脳皮質へ伝わり知覚認識されます。必要でない音(Neutral)と判断すると音は大脳皮質へ伝わらず知覚認識されません。

 

 

 

 

 

 

新しい耳鳴り理論②

 

耳鳴りの場合、聴こえの仕組みの中に耳鳴発生機構が存在します。ここから耳鳴り信号が発生します。この信号は
聴こえの神経経路を伝わることになります。このとき音の判断機構が耳鳴りを未知な音危険な音・不快な音(Negarive)と
判断すると音は増幅され大脳皮質に伝わることになります。耳鳴りの患者さんが耳鳴りを大きく感じる時にはこのような
現象が起きていると推測されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

新しい耳鳴り理論③

 

音の判断機構は大脳辺縁系と連携して音の処理を行っています。(図のD)辺縁系は記憶以外に情動(感情)を
作り出す中枢です。耳鳴りがNegativeと判断されると辺縁系で情動のスイッチが入り不安・苛立ち・緊張などの
感情が起こることになります。耳鳴りが強いとイライラしたりするのはこのためです。
大脳辺縁系は自律神経系の中枢である視床下部と深いつながりがあります(図のE)。耳鳴りが強くなると大脳辺
縁系を介して視床下部に働き、動悸・冷汗・息切れなどの自律神経症状が起こります。
逆にイライラや自律神経症状が起こると大脳辺縁系を介して音の判断機構に影響し耳鳴りが大きくなるということが
おこります。

 

 

 

 

 

新しい耳鳴り理論④

 

耳鳴りの理論に基づいた治療を考えると
①耳鳴り信号を音の判断機構がNeutralと判断するようにし耳鳴りを和らげる
②大脳辺縁系の働きを調節し不安・苛立ち・緊張などの情動反応を和らげる
③自律神経系の反応をコントロールする
が重要であると推測されます。