耳鳴り Q&A

耳鳴り診療の手順

耳鳴りの発生機序

耳鳴りの特性

当院での耳鳴りの治療を理解するために

耳鳴り診療の手順

Q1-1:耳鳴りの問診で重要なポイントは何ですか?

1.他覚的耳鳴・自覚的耳鳴

明らかな体外音源がないにもかかわらず音感覚が耳鳴り(耳鳴)です。耳鳴りの患者さんの8割以上は患者さんだけが聞くことのできる耳鳴りで自覚的耳鳴とよばれます。患者さんは自分の耳鳴りを「キーン・ジー・シーン」あるいは「蝉の鳴き声・モーターの音」などと表現します。

一方、体内に音源があり、それが内耳感覚細胞から大脳聴覚野に伝わり耳鳴りと感じられるものが他覚的耳鳴です。何らかの手段を用いれば他人も聞くことができる耳鳴りです。

耳周囲の血流の渦流によって生じた拍動性のノイズが聞こえる耳鳴りが血管性耳鳴です。患者さんは耳鳴りを「脈打つような耳鳴り」と表現し、拍動性耳鳴と呼ばれがます。耳あるいはその周囲の筋の律動的収縮でおこる他覚的耳鳴が筋性耳鳴と呼ばれます。「カチカチ」・「バチバチ」と表現されます。

持続性自覚的耳鳴が時に拍動性に感じられることもあります。

他覚的耳鳴はそれ以外の耳鳴りと原因が異なることが多く注意が必要です。

他覚的耳鳴の原因となる疾患

拍動性耳鳴動脈性
(心拍動と一致)
頸動脈狭窄
動静脈奇形・動静脈瘻
硬膜動静脈
瘻
動脈瘤
内頸動脈走行異常
グロムス腫瘍・髄膜種
特発性頭蓋内圧亢進その他

静脈性
(呼吸運動に同期)
高位頸静脈球
静脈洞閉塞
キアリ奇形
特発性頭蓋内圧亢進
血管腫
非拍動性耳鳴筋性顔面痙攣にともなうアブミ骨筋の収縮
軟口蓋・中耳ミオクローヌス
顎関節症
半規管裂隙(SCD)

耳管開放症
耳硬化症
滲出性中耳炎
中耳奇形
聴神経腫瘍

その他半規管裂隙(SCD)
耳管開放症
耳硬化症
滲出性中耳炎
中耳奇形
聴神経腫瘍

  • 頻度は高いものではありません。
  • 多くの場合画像診断が有用です。

2.耳鳴りの経過

  • 突然の難聴に伴う耳鳴りは突発性難聴による可能性があります。
  • まれに耳鳴りが発作的に起こり繰り返すものがあります。
  • ほとんどの耳鳴りは持続性のものです。
  • 持続性の耳鳴りでも耳鳴が大きくなったり小さくなったりすることが多いとされます。

3.難聴の有無

  • 耳鳴りの患者さんの80%は難聴を伴います。
  • 難聴を伴わない耳鳴りもあり、無難聴性耳鳴と呼ばれ、耳鳴りの患者さんの17%程度に認められます。
  • 難聴があるから必ず耳鳴りを伴うわけではありません。聴力検査で難聴が認められた患者さんのうち耳鳴りを訴えるのは40%程度です。
  • 難聴は耳鳴りを起こす大きな誘因ですが、それに何か他の要因が加わって耳鳴りが起こるものと考えられます。
  • 難聴を伴う耳鳴りと無難聴性耳鳴では原因が異なります。

4.難聴以外の随伴症状

めまい

  • めまい・難聴・耳鳴りを繰り返す病気の代表がメニエール病です。
  • 突発性難聴ではめまいを伴うことがあります。
  • 聴こえの神経に発症する良性腫瘍(聴神経腫瘍)では耳鳴りが初発症状のことが多く、進行例ではふらつきが起こることがあります。

頭痛

  • 耳鳴りの患者さんが頭痛を訴えることがあります。
  • 頭痛は耳鳴りを増悪させる因子となります。
  • 緊張型頭痛や片頭痛などの頭痛を治療することは耳鳴の軽減につながります。
  • 頭痛を伴う耳鳴にはまれながら、頭蓋内圧亢進症・キアリ奇形・聴神経腫瘍があります。

体性感覚の異常

  • 首こり・肩凝りは耳鳴りを悪化させる因子です。頸椎異常の診断は耳鳴りの原因診断に不可欠です。
  • 頸椎異常では手足のしびれや知覚異常を訴えることもあります。
  • 顎関節症などの顎の関節の変化は耳鳴り影響します。歯をくいしばると耳鳴りが変化することを訴えることもあります。

精神症状

  • うつ病や不安障害で耳鳴りを訴えることがあります。
  • 睡眠障害は耳鳴りを強く変化させる要因です。
  • 身体表現性障害のひとつとして耳鳴りを訴えることがあります。
  • 心身の状態は耳鳴りに強い影響をあたえることがあります。

5.内科疾患の有無

  • 体調や全身状態は耳鳴りの状態に強く影響を与えます。
  • 内科疾患の有無は耳鳴りの治療を考えるうえで重要なポイントです。
  • 高血圧・糖尿病・高脂血症などきちんと確認することが大切です。
  • 薬物の中には耳鳴の原因となるものがあります。

耳鳴の原因となる薬物

抗生物質アミノグリコシド系
マクロライド系
バンコマイシン
抗うつ剤三環系抗うつ剤
SSRI
SNRI
抗マラリア薬キニン
抗がん剤シスプラチン
利尿剤エタクリン酸
ラシックス
免疫療法剤インターフェロン
ミコフェノール酸
ラパリムス(シロリムス)
レチノイド
タクロリムス
鎮痛剤イブプロフェン
サリチル酸アスピリン
その他カフェイン
ニコチン
ランソプラゾール(PPI)

6.耳鳴の増悪因子

耳鳴を増悪させる因子

  • 様々な要因が耳鳴を変化させます。
  • 耳鳴増悪因子は個人差大きいと言われています。
  • 睡眠障害・首こり肩こり・ストレスは耳鳴増悪の三大要因です。
  • グラフは米国における耳鳴増悪因子のデータです。

Q1-2:鼓膜所見から耳鳴りの原因が分かるものはありますか?

  • 耳鳴りの患者さんのほとんどは鼓膜所見で異常は認められません。
  • 外耳疾患や中耳疾患が耳鳴の原因となることがあり、耳内所見や鼓膜所見で診断することができます。

滲出性中耳炎の鼓膜所見
滲出性中耳炎の鼓膜所見(*鼓膜を通して貯留液がアメ色に見える)
慢性中耳炎の鼓膜所見
慢性中耳炎の鼓膜所見(*鼓膜の大きな穿孔)
真珠腫性中耳炎の所見
真珠腫性中耳炎の所見(*鼓膜の一部が鼓室に侵入している)

耳鳴の原因となる外耳・中耳疾患

外耳疾患後天性外耳道狭窄
耳垢栓塞
外耳道異物
中耳疾患滲出性中耳炎
慢性中耳炎
真珠腫性中耳炎
耳硬化症

Q1-3:耳鳴りの検査にはどんなものがありますか?

  • 検査は一定の手順で行い、適切な診断に基づき治療方針を決定することが重要です。

手順1  標準純音聴力検査

  • 耳鳴りの患者さんの80%には難聴を伴います。難聴を確認するため標準純音聴力検査が不可欠です。
  • 聴力検査により難聴の鑑別診断を行います。

手順2  標準耳鳴検査

  • 標準耳鳴検査では耳鳴りの高さ(ピッチ)と大きさ(ラウドネス)を測定します。
  • 耳鳴検査と聴力検査に結果を合わせて考え、耳鳴りと難聴の関連性を推測します。
  • 耳鳴検査の結果は経過観察に重要であり、治療効果の判定に有用です。

手順3  聴力検査による診断

  • 聴力検査の結果により難聴を診断します。
  • 検査結果は伝音性難聴、感音性難聴・混合性難聴に分類されます。
  • 難聴の診断から耳鳴りの原因診断を行います。

それぞれの難聴をきたす疾患

伝音性難聴
   外耳疾患


   中耳疾患

後天性外耳道狭窄
耳垢栓塞
外耳道異物
滲出性中耳炎
慢性中耳炎
真珠腫性中耳炎
耳硬化症
感音性難聴突発性難聴
騒音難聴・音響障害
加齢性難聴
薬剤性難聴
メニエール病
外リンパ瘻
聴神経腫瘍
その他

手順4  内耳性耳鳴の診断

  • 難聴を伴う耳鳴りでは内耳障害によるものが多く認められます。
  • 内耳障害に伴う耳鳴り(内耳性耳鳴)を診断する検査を行い確定診断します。
  • 当院で行う内耳性障害診断の検査法は、DPOAE検査・SISI検査です。

手順5  その他の検査

  • めまいを伴う耳鳴りでは平衡機能検査を行います。
  • MRIやCTなどの画像検査が必要な耳鳴りの患者さんは多くはありませんが、いくつかの疾患では診断に画像検査が有用なことがあります。

Q1-4:耳鳴りの治療はどのように進めるのですか?

耳鳴りの治療法には様々なものがありますが、薬物療法だけでなく患者さんに適した治療法を組み合わせて総合的に治療することが大切です。小林耳鼻咽喉科内科クリニックの耳鳴り総合治療には正確な診断のもとに段階を踏んだ治療を行っています。

1st Step 原疾患に対する治療

耳鳴りの原因となる疾患には特定の治療法があるものがあります。耳鳴りの治療の第1段階は原因疾患に対する治療から始まります。

原因疾患に対する特定な治療

外耳疾患
 後天性外耳道狭窄
 耳垢栓塞
 外耳道異物
中耳疾患
 滲出性中耳炎


 慢性中耳炎
 真珠腫性中耳炎
 耳硬化症

外耳道形成術
耳垢栓塞除去
異物摘出

鼓膜切開
鼓膜チューブ留置術
補助的な薬物療法
鼓室形成術
鼓室形成術
アブミ骨手術
内耳疾患
 突発性難聴
 騒音難聴
 音響外傷

 メニエール病


 外リンパ瘻
 薬剤性難聴
後迷路疾患
 聴神経腫瘍

早期の薬物療法
音響曝露の予防
早期の薬物療法
音響曝露の予防
薬物療法
中耳加圧療法
内リンパ嚢減圧術
外リンパ瘻閉鎖術
薬剤投与法の選択

聴神経腫瘍摘出術
その他
 うつ病
 不安障害
 身体表現性障害

抗うつ剤
抗不安薬
心理学的治療
心身医学的治療

2nd Step 耳鳴りの薬物療法

耳鳴りの治療には様々な薬物が用いられていますが、それらは漫然と用いるのではなく、耳鳴り発症機序に基づき一定の手順(プロトコール)を踏んで服用するようにすることが大切です。あれやこれや薬物を同時に投与するよりは段階を踏んで投与し患者さんに適した治療を行うことが原則です。
耳鳴りの薬物療法の対象となる患者さんは

  • 原因疾患に対する治療のない耳鳴り
  • 原因不明の耳鳴り
  • 原因疾患に対する治療では改善しない耳鳴り

内耳機能の改善をはかる薬物療法から耳鳴りの治療を開始する。

耳鳴りの患者さんの8割には難聴を伴います。そのほとんどは内耳性難聴であり、耳鳴りは内耳性耳鳴症と考えられます。内耳機能改善をめざす薬物療法が耳鳴りの薬物療法の最初の段階です。服用後の経過観察で効果が認められない場合には漫然と投与することのないようにすることが大切です。


内耳機能の改善をはかる薬物

耳鳴りを増悪させる要因を考え薬物療法を行う。

様々な要因が耳鳴りを増悪させます。増悪させる要因は個人差があり、それをはっきりさせることが治療法の選択に有用です。一般的には次の3つが耳鳴りを増悪させる要因と考えられています。

  • 睡眠障害
  • 頭を取り巻く筋肉の過剰な緊張(首こり肩凝り)
  • 様々なストレス
増悪因子の改善は単に薬物療法に頼るのではなく、生活習慣の改善や運動療法など総合的なアプローチが大切です。


増悪因子の改善をはかる薬物

心身の安定をはかり耳鳴りを軽減させる薬物療法も選択肢である。

難聴を伴う耳鳴りであっても様々なストレスが耳鳴りを悪化させます。心因性の耳鳴りもあります。心身を安定させることは耳鳴りを軽減させることになります。適切な薬物を選択し治療を行います。耳鳴りの治療で心身の状態を考える場合、次の点が要点です。

  • 耳鳴りに対する不安感があるか
  • 耳鳴りに伴いうつの状態になっていないか
  • 心理的ストレスが必要以上に身体的症状となっていないか


心身の安定をめざす薬物

経験的に耳鳴りの治療に用いられる薬がある。

経験的に耳鳴りの治療に用いられる薬物があります。これらはいずれも効果にはっきりとしたエビデンスがなく、投与には慎重である必要があります。


経験的に耳鳴りの治療に用いる薬物

3rd Step 耳鳴りの総合的治療

耳鳴りの治療法には薬物療法ばかりでなく、生活指導管理、ストレスマネージメント、音響心理学的治療など様々なものがあります。これらを患者さん一人ひとりに適した形で行うことが重要です。

Q1-5:耳鳴りの原因がはっきりしないと言われました。治療はあるのでしょうか。

耳鳴りの発症には複雑な要因がからみ、原因がはっきりしないことがあります。原因がはっきりしない場合でも、一定の手順に従って耳鳴りの治療を行い、効果を期待することができます。ただし治療に対する正しい理解が大切です。

耳鳴りの発生機序

Q2-1:耳鳴りは良くある病気なのですか?

米国の統計では4000~5000万人が一過性でない耳鳴りを有しているとされています。これは米国の人口の12~16%にあたります。耳鳴りは決してまれなものではありません。けれども耳鳴りを感ずる人がすべて医療機関を受診する訳ではありません。やはり米国の統計によると耳鳴りが原因で医療機関を受診するのは耳鳴りを自覚するすべての25%以下といわれています。耳鳴りのある多くの人は医療機関を受診して治療を受けているわけではないのです。耳鳴があることが問題ではなく、耳鳴りがどれだけ生活に影響し支障を来すかが医療機関を受診するきっかけになると考えられます。

Q2-2:静かな部屋でわずかな耳鳴りを感じます。心配なことですか?

音を遮断した防音室の中では正常な人の94%の人で耳鳴りを感じたという報告があります(防音室内耳鳴)。このことから、人はだれでも耳鳴りがあるが、ただ周囲の雑音にかき消されて聴こえないだけであると考える研究者もいます。極めて短い時間、たとえば数秒というような耳鳴りは多くの正常な人が感じているものと考えられます。

Q2-3:耳鳴りはどうして起こるのでしょうか?

耳鳴りは様々な病気が原因で起こりますが、どのように耳鳴が起こってくるか(発生機序)ははっきりわかっていません。現在いくつかの仮説が考えられています。

正常人と幻肢のある人の脳の研究

耳鳴りは難聴に対する中枢神経系の過敏状態である。

手足を失ってもまだそれらが実在するかのように感じる幻肢という現象があり、実在しない四肢に持続的な痛みを感じることもあります。痛みや触覚は知覚神経を通り脊髄を上行し最終的に大脳皮質で知覚認知されます。体の知覚情報は体の部位によって大脳皮質の特定の部位で知覚され、その分布が解明されています。図のように、正常人と幻肢のある人の脳の研究では脊髄感覚入力によって活性化する大脳皮質領域が幻肢の患者さんでは拡大していることがわかっています。

耳鳴りの多くは耳が障害を受け難聴がある場合によく見られることから、耳鳴りは幻肢のように入力が失われた中枢神経系の過敏状態を反映していると考えることができます。聴覚入力ないと、中枢神経系の細胞が一層活動を増し、脳はそうした神経活動を、耳鳴りという意味ある経験に変えてしまうと考えられます。

内耳感覚細胞の電気生理学的異常が耳鳴りを引き起こす。

脳過敏という中枢性に耳鳴が起こっているという仮説ばかりでなく、内耳感覚細胞の異常が耳鳴りを引き起こすという研究もあります。鎮痛解熱剤であるアスピリンは一過性の耳鳴・難聴を引き起こすことが知られています。アスピリンをモルモットに投与すると、急速に内耳特に蝸牛に取り込まれ、音を感じ取る感覚細胞に分布します。それとともに、内耳感覚細胞の電気生理学的な変化が起き、蝸牛神経(聴覚の刺激を伝える神経)の自発放電が増加します。この自発放電の増加が耳鳴り信号として知覚されると考えられています。

耳鳴りは聴覚に関する神経ネットワークから起こってくる。

脳過敏仮説あるいは内耳感覚細胞電気生理学的異常仮説のどちらか単独で耳鳴りの様々な特徴すべてを説明することはできません。耳鳴りの原因疾患がなんであれほとんどすべての患者さんの耳鳴りの特性は同じであることを考えると耳鳴りの発生機序はどの患者さんでもほぼ同じであると思われます。おそらく内耳感覚細胞に始まりそれに連なる蝸牛神経そして大脳聴覚野に至る聴覚に関する神経ネットワークを中心に中枢神経系全体が関与した複雑な仕組みの中で耳鳴りという感覚が発生してくると私たちは考えています。

Q2-4:難聴はありませんが、耳鳴りがあります。

耳鳴りの多くは難聴を伴いますが、20%程度の患者さんでは難聴を伴わず無難聴性耳鳴とよばれます。無難聴性耳鳴の発生機序ははっきりわかっていません。難聴がありませんのでQ2-3で述べたような機序で起こることは考えられません。難聴の自覚がなくても聴力検査では難聴が認められることも少なくありません。標準純音聴力検査による聴力の確認が大切です。標準純音聴力検査が正常であった場合でも無難聴性耳鳴の診断は慎重に行なうことが必要です。標準純音聴力検査は8000Hzを超えた音域の検査は器械の規格で測定できません。たとえ標準純音聴力検査が正常であっても高い音域の聞こえ変化している可能性もあります。実際、聴力検査が正常の患者さんの耳鳴りの高さが10000Hzであったり12000Hzであったりすることがあります。このような場合無難聴性耳鳴を診断すること難しいことになります。一方、標準純音聴力検査で異常がなく、聴力検査の範囲内(125Hz~8000Hz)に耳鳴りの高さがある場合無難聴性耳鳴耳鳴が強く疑われます。

Q2-5:加齢とともに耳鳴が起こるようになるのですか。

耳なり、難聴の有訴者率(人口千対)

国民衛生の動向によれば、耳鳴りを訴える人は年齢とともに増加しますが、75歳以上は逆に減少します(図の黄色)。耳鳴りは加齢の影響はあまり受けません。一方、難聴を訴える人は年齢とともに増加し特に75歳以上では急激に増加します(図の赤)。年齢の伴う難聴を加齢性難聴といい、加齢性疾患の一つですが、加齢性耳鳴はないと私たちは考えています。耳鳴りは年のせいではないと思われます。

耳鳴りの特性

Q3-1:耳鳴りが大きくてつらい日とそうでもない日があります。

耳鳴を増悪させる因子

耳鳴はいろいろなことで増悪します。研究データからはグラフのようなことが耳鳴り増悪させるとされています。耳鳴りを訴える人の半数以上がストレスや疲労で耳鳴りが増悪するとしています。感冒など体調の変化も耳鳴りに影響します。大きな音や長時間にわたる音の曝露は耳鳴りを変化させます。適切な音の環境が耳鳴りを安定化させるのに役立つ場合もあります。歯をくいしばると耳鳴りが大きくなることがあります。顎の運動は耳鳴りを変化させ、歯ブラシで耳鳴りが大きくなるという方もいます。これらは頭を取り巻く筋肉の緊張の変化によって耳鳴りが変化することを意味しているものと思われます。頭部や頸部の外傷後に起こる耳鳴りはやはり筋緊張が関係していると考えられます。体位の変化や咳・くしゃみが耳鳴りを変化させれることがありますが、これも同じことが考えられます。薬物や飲酒・カフェインは耳鳴りを増悪させることがあります。薬物では解熱剤であるアスピリンやアセトアミノフェンが良く知られています。耳鳴りを増悪させる様々な要因を知り、それに対応することは逆に耳鳴りを和らげることにつながります。

Q3-2:耳鳴りは小さいのですがとても気になりつらいです。

耳鳴りの感じ方には二通りあります。一つは耳鳴りが「大きい、小さい」あるいは「強い、弱いという感じ方。今一つは耳鳴りが「煩わしい」「気になる」という感じ方で、これは「生活に支障をきたすかどうか」と言い換えることもできます。これら二つの感じ方は異なった現象と考えられます。内耳感覚細胞に始まりそれに連なる蝸牛神経そして大脳聴覚野に至る聴覚に関する神経ネットワークを中心に中枢神経系全体が関与した複雑な仕組みの中で耳鳴りという感覚が発生してくると考えられ、脳全体の働きの中でおこる耳鳴りの現象の異なった側面からこれら二つの異なった耳鳴りの感じ方が起こってきているのです。

Q3-3:仕事などに熱中していると耳鳴りが気にならなくなります。

耳鳴りはさまざまな状況で変化します。仕事などで何かに熱中していると耳鳴りが気にならない、耳鳴りを感じないことは多くの人が経験するところです。これには人の意識状態が関係しています。人の意識状態は刻一刻変化し、それとともに耳鳴りも変化します。意識の状態は感覚に影響を与えます。休日、静かな部屋で読書に熱中しているとき、途中で降りだした雨に気づかないことがあります。そして、ふとした瞬間、雨音に気づき「ああ雨だ」という経験はどなたにもあるでしょう。前からの雨音に気づくには意識の変化が必要なのです。耳鳴りも聴覚の感覚ですから、はっきり知覚するには意識の変化が必要です。仕事で、会議に集中する、重要な書類に眼を通すときなど意識は会議や書類に集中しています。その間、耳鳴りの感覚は意識の外に置かれ、耳鳴りを感じないのです。

Q3-4:静かな部屋で耳鳴りが大きくなり気になります。

周りの音環境の変化は耳鳴りの感じ方に影響します。静かな部屋では耳鳴りが気になることはよくあり、逆にある一定以上音のあるところでは耳鳴りは感じにくくなります。周りの音で耳鳴りが感じにくくなる現象を遮蔽効果といいます。周りの音が大きいほど遮蔽効果は強くなります。大きい音では耳鳴りは遮蔽されても不快感が強くなることもあります。これには音が響いて聞こえる現象、聴覚過敏が関連していると思われます。

Q3-5:大きな口を開けたり、歯を食いしばると耳鳴りが変化します。

耳鳴りの患者さんは大きな口を開けたり、歯を食いしばると耳鳴りが変化することを経験します。頸こり肩こりが強くなると耳鳴りが強くなります。頭を取り巻く筋肉の緊張状態は耳鳴りに影響を与える因子です。筋肉からの求心性の中枢神経への入力が耳鳴りを変化させ、体性感覚耳鳴と呼ばれています。

Q3-6:朝目覚めるとき耳鳴りを大きく感じます。

朝目覚めると耳鳴りを大きく感じることがあります。耳鳴りは脳の働き全体のなかで知覚されていると考えられており、脳の働きの状態で耳鳴りの感じ方が異なります。寝ている間は意識がありませんから耳鳴りを感じることはありません。目覚め始めると意識が徐々に回復し始めます。それとともに知覚がもどり耳鳴りを感じ始めることになります。脳は様々な仕組みで耳鳴りが意識に上らないようにします。目覚めるときには、脳が完全に覚醒しておらずその仕組みが働かず時、耳鳴りを強く知覚することになります。

耳鳴りの治療を理解するために

Q4-1:耳鳴りはなおらないといわれました。

耳鳴りには様々な要因が絡み、治療も複雑なものとなります。適切な治療を進めるには患者さんに耳鳴りの治療を正しく理解していただくことが大切です。いくつか理解のポイントをあげます。①耳鳴りは脳全体の働きの中で知覚される現象である。②耳鳴りの自覚症状には強い弱い(あるいは大きい小さい)というものと煩わしい、気になる(生活に支障をきたす)とがあり、この二つは異なった現象である。③耳鳴りをゼロにすることが治療の目標ではない。これらを理解していただき適切な治療を実践することで耳鳴りを和らげることが可能です。決して耳鳴りは治療できないものではありません。

Q4-2:耳鳴りは脳の病気なのですか。

耳鳴りは脳全体の働きの中で知覚される現象ですので、脳腫瘍、脳梗塞、脳出血などで耳鳴りが起こることがあります。しかし、耳鳴りのほとんどは難聴を伴うことから、内耳感覚細胞に始まりそれに連なる蝸牛神経そして大脳聴覚野に至る聴覚に関する神経ネットワークを中心に中枢神経系全体が関与した複雑な仕組みの中で耳鳴りという感覚が発生してきます(詳しくはこちら)。脳はさまざまな刺激に反応しいろいろな状況や環境に適応・順応しています。脳は耳鳴りという状況に適応・順応し耳鳴りが変化します。脳はその働きの中で耳鳴りを処理し耳鳴りを変化させます。脳が耳鳴りの状況に適応順応するようになれば耳鳴りが和らぎます。その働きがうまくいかない時に耳鳴りが解消されず問題となります。耳鳴りは脳の病気であることは極めてまれであり、いろいろな要因によって脳が耳鳴りを処理できずさまざまな問題を引き起こいる状態と考えられます。

Q4-3:耳鳴りの自覚症状をどのように評価するのでしょうか。

体内に音源があり、その音源からの振動が聞こえの仕組みに伝わり耳鳴りが起こることがあります。耳に入れた管やマイクで第三者にも聞くことができるため他覚的耳鳴とよばれます。一方、患者さんのみが聞くことができる耳鳴りが自覚的耳鳴です。耳鳴りのほとんどは自覚的耳鳴です。一般的に、耳鳴りとはこの自覚的耳鳴を指します。自覚的耳鳴の場合、自覚症状の客観的評価が難しいことがあります。そのためにいくつかの方法が開発され、当院でも採用しています。耳鳴りの感覚的強さの自己評価の方法として数値的評価尺度があります。これは耳鳴りの感覚的な強さを0(耳鳴りはない)~10(今までで一番大きい)の間で数値的に超過するものです(実際の評価法はこちら)。一方、耳鳴りがどの程度生活に影響し、生活の支障になっていることも患者さんにとっては問題となる症状です。これを評価するものが耳鳴苦痛度質問票です(実際の質問票はこちら)。これらの質問はいずれも耳鳴りが生活の上で問題となるものであり。それらに「はい」「時々」「いいえ」答え、数値化するものです。数値が大きいほど(0~100)耳鳴りが生活に支障をきたしている状態で苦痛の度合いが強いと評価します。当院ではこの二つの評価法を治療経過の中で定期的に行い治療の評価を行っています。重症度ばかりでなく治療経過の評価にも活用しています。繰り返し行うことは患者にご負担となる場合もありますが、主旨をご理解いただきご協力をお願いします。

Q4-4:Q4-3の評価法は二つとも必要なのですか。

耳鳴りの数値的評価尺度と耳鳴苦痛度質問票は自覚症状を点数化して数値化することができます。これにより、重症度や治療経過を客観的に評価します。さらにはこの二つの評価法の相関性を評価することもできます。当院を受診した耳鳴りの患者さんに行なった二つの評価の数値を比較すると二つの間に相関性が認められませんでした。数値的評価尺度の数値が高ければ耳鳴苦痛度質問票の数値が高いわけではありませんし、逆に一方が数値が低いと、他方が高いわけではありません。一方が高い値であっても、他方が低い値となる患者さんも少なくありません。このことから、耳鳴りの数値的評価尺度と耳鳴苦痛度質問票は、自覚症状の異なる側面を評価しているものと当院では考えており、両方の評価法を行うようにしています。

Q4-5:初診時の問診の要点はなんですか。

診療において問診は重要です。問診を適切に効率的に行うために当院ではWeb問診を行っています。初診予約後に行なっていただくことによって、どなたでも問診に的確に答えていただくことができます。以下に問診の要点を上げます。問診にこたえる際の参考にしてください。

  • 時に医師は患者さんに「どちらの耳に耳鳴りがありますか?」と尋ねます。これは必ずしも正しい表現ではありません。耳鳴りは内耳感覚細胞に始まりそれに連なる蝸牛神経そして大脳聴覚野に至る聴覚に関する神経ネットワークを中心に中枢神経系全体が関与した複雑な仕組みの中で起こる感覚です。「どちらの耳に耳鳴りを感じますか?」が正しい表現と考えられます。耳鳴りは頭の中の様々な部位で感じることがあり頭鳴りと呼ばれます。時にはどこで感じているかはっきりしないこともあります。
  • 拍動性の耳鳴は原因が特定でき治療により根治ができる場合も少なくありません。拍動性耳鳴を確認することが大切です。
  • 耳鳴りの患者さんの80%は難聴を伴います。音が響いて聞こえたり、音が割れて聞こえる聴覚過敏は耳鳴りと密接に関係すると考えられています。聴覚過敏が強いと耳鳴の症状も強くなると推測されます。聴覚過敏ほど耳鳴のとの関連ははっきりしませんが、耳のつまった感じ(耳閉感)も耳鳴りの患者さんに伴うことの多い症状です。
  • 当院を受診される耳鳴りの患者さんの多くは3か月から6か月以上持続する慢性の耳鳴りの患者さんです。これらの患者さんには適切な診断に基づいた耳鳴りの総合的な治療が必要です。持続が3か月未満の耳鳴りは急性の耳鳴りも考えられ、原因疾患に対する治療が可能な場合もあります。
  • 耳鳴りの患者さんでは耳鳴りの苦痛度が強くなると不眠、不安、うつ、集中力低下など症状が起こりその結果生活の質(QOL)の低下することが知られています。逆に、QOLを改善させることは耳鳴りの治療となります。そのためには耳鳴の苦痛度を強める要因を見極め治療を組み立てることが大切です。当院では、その要因として特に、さまざまなストレス、睡眠の状態、頭頸部の過緊張(首こり・肩こり)を考えています。このうち、睡眠の状態、頭頸部の過緊張(首こり・肩こり)に関しは、Web問診で確認します。ストレスの影響に関しては来院後、別途チェックします。
  • その他の耳鳴りに伴う症状としては、耳鳴りの苦痛度が強くなった場合の自律神経症状や頻度は少ないとはいえ中枢性疾患に伴う耳鳴りを見逃さないための症状を確認することが大切です。
  • 過去の耳鳴りの診断や服用薬剤はこれからの診療に有用な情報となります。
  • 耳鳴りに対して服用している薬ばかりでなく、その他の病気で服用している薬の確認が大切です。薬剤のなかには耳鳴りを引き起こすとされるものもあります。お薬手帳をご持参ください。

Q4-6:初診時の診療内容を理解するために

耳鳴りはさまざまな要因が影響する脳の知覚現象です。耳鳴りの治療を適切にに進めていくには、それらの要因を理解し解決することが必要です。耳鳴りの患者さんの80%に難聴があり、そして耳鳴りが起こってきます。患者さんの聞こえの状況を確認し、耳鳴りとの関係を確認することが大切です。診察の前に聴力検査と耳鳴検査を受けていただきます。耳鳴り診断の基本的な検査です。

聴力検査で確認する要点

  • 難聴の有無:耳鳴りの患者さんの80%は難聴を伴います。また、難聴を伴わない耳鳴りもあり、無難聴性耳鳴と呼ばれ、耳鳴りの患者さんの17%程度に認められます。難聴を伴う耳鳴りと無難聴性耳鳴では原因が異なります。逆に、難聴があるから必ず耳鳴りを伴うわけではありません。聴力検査で難聴が認められた患者さんのうち耳鳴りを訴えるのは40%程度です。難聴は耳鳴りを起こす大きな誘因ですが、それに何か他の要因が加わって耳鳴りが起こるものと考えられます。

難聴の形推測される代表的疾患
水平型さまざまな疾患
低音障害型メニエール病・低音障害型難聴に特徴的
高音障害漸傾型加齢性難聴に特徴的
高音障害急墜型薬剤性難聴
dip型騒音性難聴の初期
谷型・山型・全聾先天難聴・ムンプス難聴・山型では低音障害型と高音障害漸傾型の合併

耳鳴検査で確認する要点

  • 耳鳴の高さと強さ:耳鳴検査装置の検査音を用い、患者さんの耳鳴りの音の高低と強さを調べます。高さは周波数(Hz)、強さは音の大きさ(dB)で表されます。聴力検査と同じ単位です。聴力検査との比較が可能となます。具体的には、ある患者さんの耳鳴検査の結果は「高さ8000Hz、強さ40dB」などと表現されます。耳鳴りが何種類かある場合にはそれぞれで高さ、強さを確認します。
  • 耳鳴検査と聴力検査とを比較する:耳鳴りの患者さんの80%に難聴があり、そして耳鳴りが起こってきます。このような場合、耳鳴りと難聴は耳鳴りは相関すると考えられ、耳鳴の耳鳴の高さは難聴のある範囲特に聞こえの変化の一番大きい高さに一致することが一般的です。難聴のない耳鳴りでは耳鳴りの周波数はさまざまです。

高音障害漸傾型を示す加齢性難聴患者さんの耳鳴検査所見:右(●)左(●)ともに耳鳴の高さは8000Hzである。聞こえが変化している範囲内(緑の矢印)特に、変化の一番大きい高さに一致していることがわかる。

低音障害型左メニエール病の患者さんの耳鳴検査初見。左(●)に125Hzと500Hzの2種類の耳鳴が確認された。聞こえが変化が大きい範囲内(緑の矢印)の高さに一致していることがわかる。

難聴のない耳鳴患者の検査所見:聴力は正常である。右(●)左(●)ともに耳鳴の高さは500Hzである。

聴力検査と耳鳴検査は、それぞれ独立に評価するものではなく、相互の関係を評価することが大切です。難聴のある耳鳴りの患者さんでは耳鳴の高さは難聴のある範囲特に聞こえの変化の一番大きい高さに一致することが一般的であることもそのひとつです。これ以外にも、聴力検査と耳鳴検査難聴を相互評価することで耳鳴りのさまざまな診断をすることができます。

聴力検査と耳鳴検査の規格の違い

  • 検査できる音域の違い:聴力検査が125Hz~8000Hzの音域で検査が可能であるのに対し、耳鳴検査は125Hz~12000Hzまで検査が可能です。その差が耳鳴の病態の診断に影響を与えることになります。

高音漸傾難聴患者の耳鳴検査。右(●)左(●)ともに耳鳴の高さは10000Hzである。この患者さんでは、耳鳴りの周波数では聴力検査の規格上聴力レベルを確認できない。10000Hzでも難聴が存在すると考えられるが確認する検査が必要である。

聴力検査が正常である耳鳴りの患者さん。耳鳴検査では耳鳴の高さは12000Hzである。耳鳴りの周波数では聴力検査の規格上聴力レベルを確認できない。12000Hzの感覚細胞の機能を確認して難聴のない耳鳴り、あるいは難聴を伴う耳鳴りかでありかを確認することが治療の上で大切である。

準備中

初診終了時に患者さんに確認していただきたいこと

  • 聴力検査での難聴の有無。聴力検査で確認された難聴の型。聴力検査で推測される原因疾患。
  • 耳鳴検査で確認された耳鳴の高さと強さ。それらの聴力検査結果との関連。
  • 多くの場合、初診の検査だけでは耳鳴りの診断は確定できず、さらに検査を行う必要があります。
  • さらに行う検査とは、①慢性の耳鳴りに伴う難聴はほとんどが内耳性難聴であり、これを確定させるための検査。②耳鳴りと密接に関係し、耳鳴の症状を増悪させる聴覚過敏を推測する検査、などがあります。当院では、DPOAE検査・SISI検査・標準語音検査を行っています。
  • 初診時からすぐに治療が始まるわけではありません。慢性の耳鳴りではその病態をきちっと診断し治療を始めることが大切です。しかし、初診時の診察、検査である程度原因疾患が判明し、治療が可能な場合には治療が開始されることもあります。特に急性期では治療を急ぐこともあります。
  • 指示に従い、次の診察の予約をお願いいたします。

以下準備中

Q4-7:DPOAE検査・SISI検査・語音聴力検査とはどんな検査ですか。準備中

Q:耳鳴りに対する音響療法とはどのようなのものですか。準備中です。

音響療法(音響心理学的治療)とは外部から特定の音を一定の方法で聞くことで耳鳴りの苦痛を和らげる治療法です。

外部の音を用いることにより耳鳴りの苦痛を和らげる治療が音響心理学的治療です。耳鳴りの理論に基づいたマスカー療法やTRT療法といったものから、補聴器の活用、日常生活の中で自分に好ましい音を聞き取ることなど様々な方法があります。この治療法の目的は外部からのバックグラウンドの音を大きくし、耳鳴りの音とバックグラウンドの音の比率を変化させ、耳鳴りの音を変化させることです。
患者さんに適した音響心理学的治療方法を選択することが大切です。

以下準備中

ここに文章を入力してください